危ない「漢方のお医者さん」との戦いの記録

「専門家」が誰も助けてくれなかったので、独学・自分の体で命をかけて漢方薬の人体実験した記録。書いてあるとおりかなり危ない状況だったので、安易にまねしないでね。

2012年06月

先日図書館で、1冊のムック本を見つけて、読んでみた。
その本は、「週刊朝日MOOK・漢方2010 漢方養生術 漢方入門書の決定版!」(朝日新聞社)。

で、気付いた。
日本漢方で、なぜ、あんなに柴胡を多用し、補陰剤のレパートリーが少ないか、の原因に。


この本でも他の日本漢方系の本でもそうなんだけど、例えば、陰虚である可能性がある症候に対して、中医学だったら考慮すべき「補陰」があまり考えられていない漢方薬のチョイスが載ってたりする。
この本では、様々な「漢方の専門家」がいろいろなことを書いているのだけれど、たとえば、補腎」の項では、補陽はあっても、補陰の概念は載ってない。
便秘の項では、便秘外来の調査では、冷えを訴える人が9割、なんて書いてあって、ここで以前書いた石原医師同様、便秘の時は温める!と書いてある。つまり、陰虚などによる便秘は考慮されてないってこと。(熱による原因だろうがどんな原因だろうが、ひどく便秘したら、腸の血行不良とかも起こってくるから、当然冷えは感じるんじゃないの???)
以前ここで書いた石原医師と同様、その医師も、その「冷え」が相対的に冷えてるのか真性の冷えなのかは区別せずに、シナモン・ジンジャーティーを勧めてるしっ!!!びっくり。どうなんだこれ。危ないなぁ・・・


・・・と、細かいところを上げていくとキリがないので、この辺で本題に。


この本では日本漢方だけでなく中医学も扱われていて、日本中医薬研究会の会長による項があった。
「ドライインシンドローム対策 それは補陰であり、中医学の得意分野」と題して、「日本の漢方には湿気を取る薬は多くあっても、潤す補陰薬は少ないとよく言われますが、それはもともと日本が高温多湿で、湿気が多い国だからです。」とあり、さらに、現代風の生活によって、補陰薬が必要な人が増えています、という趣旨のことが書いてあった。


これ読んで、ああ、なるほど、と思ったね。

この記述から私が考えたのは、この文章の内容を納得したからじゃない。全然別。
ああ、日本漢方って、男性によって受け継がれてきた医学だから、補陰剤が少ないんだね、ってこと。


だって、女性って、月経・出産があるんだから、ある程度年齢重ねた女性ならほとんど誰でも多かれ少なかれ陰虚なんだもん。
少なくとも女性は、陰虚の人、昔から多かったはずだよ。
陰って、水(津液)ってだけの話じゃない。血と密接に関わるもんでしょ?
まともな外科の技術もなかった昔のほうが、失血などによる陰虚は多かったんじゃないの?
それを、男性医師が、すくいあげて来なかっただけでしょ?
昔は少なかったんじゃなくて、気付かれなかっただけでしょ?
と思ったわけ。
(しかし・・・医療の発達してない昔のこと、本当に陰虚が重度な人はすぐに死んじゃうはずだから、それで「少ない」のか???)


対して、なんで中国で女性に対する補陰剤がたくさんあるかっていうと、あちらの方のほうが、自己主張が激しいから、という気がしてならない。
だって、今だってそうだけど、日本女性は、特に月経などに関わる体調不良に関しては、かなり我慢してしまう。
で、専門家から、「あなたはこうです」といわれれば、納得できなくても、その治療でよくならなくても、素直に(・・・本心からかどうかは知らんが少なくとも表面上は素直に)それで終了してしまう傾向が大きい。
しかも、その苦しみって、男性にはなかなか分かってもらえない。
それ、漢方の専門家でも同じ傾向。不満を言っても、無駄だったのかも、なんてことも思う
だから、女性からの「その薬効きません」なんていうことを聞くことが少ないんじゃないかと。
・・・というか、日本人なら、その薬利きませんという前に、別の専門家を探すかあきらめちゃう傾向がある気がする。当たり障りなくなぁなぁで暮らそうという、島国根性だね。特にコミュニケーションを重視する女性ではその傾向が強いし。
でも、中国の人って、結構言うことは言うから、日本にみたいに一方通行じゃなくて、患者側からの訴えが専門家側により伝わるから、補陰剤もたくさんあるんじゃなかろうか、と思う。


で、日本では、湿度が高い分、男性が陰虚を感じることが中国より少ないこともあって、「陰」の概念が浸透しないまま、現在に至る、と。

だから、この本でも、「症状別で診断!漢方薬の選び方」と題する、自分で漢方薬を選ぶチャートでも、陰虚の場合はどうすんの?選択肢無いよ???という感じ。

こういう状態だから、明らかに陰虚火旺の症状が出てる父親に平然と小柴胡湯を出したりする大学病院の漢方外来の医師がいたり、陰虚火旺状態の私に柴胡疏肝散単独を出そうとする日本漢方薬局の薬剤師がいたり、なんていう、陰を消耗する柴胡の乱用状態が生まれることになったんだろうな。


だから、陰虚が重かった私の場合、日本漢方が合わなかった、と。
ああ、なるほどね・・・



JAF Mateの5ページに連載中の、石原医師による「美食同源」記事について。
手元に届いた7月号も、これまたトンデモの内容で、ある意味面白い。


この7月号分に取り上げられてるのは、便秘。

彼によると、「便秘の大きな原因は、体の冷えと腹筋の弱さ」だそうな。
だから、「まずは体を温めましょう」
だってさ。


中医学的には、便秘は、実熱タイプ、陰虚タイプ、気滞タイプ、気虚タイプに分かれる。

で、実熱タイプと陰虚タイプは、虚実の違いはあっても体に熱があって便秘してんだから、当然、体温めたら悪化する。
気滞タイプは、寒熱どっちかわかんないけれど、少なくとも肝に負担がかかって気滞が起こってる場合、肝に熱がこもってることがあるので(肝も火の臓腑だしね)、これも、見極めないと危険。
単純に温めていいのは、気虚タイプだけじゃなかろうか(ってか、陽虚タイプね)。


つまり、やっぱり、この最新号でも、トンデモ記事だった、ということで。
(そういや、先月分見ないうちに雑誌処分されちゃったけど、何が書いてあったんだろう・・??見なくてもいいけどさ。)


JAF Mateは、普段さほど目にはつかないけれど多くの人に手元に届いてる雑誌だから、これ読んで温めを実践して、便秘悪化する人、出るんだろうなぁ・・・、と思う。


現在やってる漢方講座の生徒さんでも、この石原氏の主張を信じてた人がいらっしゃり。
「本持ってます。多くの人に貸しました。」
と。

講座で、中医学的には、石原氏の言ってることはトンデモ話です!!!
と言ったら、えらく驚かれた。
しかも、JAF Mateのような多くの人が手に取る雑誌で、こんな誤った情報が流れてるなんて、ってことも、皆さんには衝撃だったらしい。

でも、こんな「エセ漢方情報」なんて、巷にはあふれてるわけで、
「これが、漢方をめぐる日本の現状です」
なんて、悲しい顔して言ってみたりして。
そのおかげで、安易な「漢方情報」に踊らされないようにして、中医学を勉強してちゃんと自分で自分の体の声を聞いてあげましょう、という、講座における根幹となる大事な部分が、生徒さんたちの心に届いた・・のではなかろうか。


よって、ある意味、日本の現状を如実に指し示しているこのJAF Mate、とても役に立ってます。
次回の講座で、この7月号、教材に使おうっと。


自分のカラダで分かった、方剤に入ってる生薬のことがある。
それを、今回は、二つほど。


まず、竜胆瀉肝湯。
これ、柴胡が入ってるのと、入ってないのがある。
「医宗金艦」の記載の方剤では入ってるし、「薜己」の方剤では入ってない。
日本のエキス剤でも、メーカーによって、両タイプある。
メジャーなツムラのには柴胡は入ってない。
これ、どーして2タイプあるんだろーなー???と思ってた。


でも、自分が柴胡で痛い目にあって、分かった。

柴胡が入ってるのは、主に肝胆に実火が入ってる場合。
だけど、あまり陰虚がひどい場合に使うと、柴胡の燥性でより悪化するから、気をつけなきゃいけない。
柴胡が入ってないのは、肝胆に実火は入ってるけれど、根底に陰虚がある場合にも大丈夫、と。

つまり、柴胡が入ってないほうが、応用範囲が広いんだろうな。
だから、こっちがメジャーなんだろう・・・と思う。

でも。
肝に火が入ってるってことは、肝の機能が落ちてるってことで、そこをカバーしないで無理に疏肝理気剤なしの補剤が入ってる方剤使ってると、さらに、肝を悪くするだろうな。
(実際私、、やっちゃったから、これ、よく分かる。顔とか舌が紫になるの~!!!)
だからこそ、疏肝理気剤の柴胡が必要なんだな。
で、陰虚火旺で柴胡が使えない状態であれば、柴胡を川楝子に変えればいいわけか。

なんか、そう考えると、すごく納得。

やっぱり、方剤を構成する一つ一つの生薬って、意味があるんだなぁ、と思う。



それから、もうひとつの方剤の話。
「中医処方解説」には、当帰四逆湯の項で、これに含まれる木通について、「木通は・・・・苦寒性の利水薬であるからとくに適切な配合とは言えない」と書かれている。
当帰四逆湯は、カラダを強く温める方剤だから、単純に考えればそう思うかも。

でも。
私は、この方剤には、木通は必要だと思う。

だって、木通の主な帰経は、心。
その心の熱を取ってくれる作用がある。
心って、とても火が入りやすいもん。
ただひたすらに体を温めてたら、心に火が入りやすくなっちゃうでしょ?
だから、それを防いで心熱を取ってくれるのが、木通、じゃないかな?

日本では、当帰四逆湯に呉茱萸と生姜を加えた、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が、医療用のエキス剤にあるので、メジャー。当帰四逆湯より体を温める作用が強い。
だから、よりいっそう木通が必要な気がする。

カラダが冷えてる人でも、根底に心腎不交があって舌先だけちょっと赤い人なんていくらでもいるわけで(昔の私もそうでした。年齢重ねるとそういう人増えるんでなかろうか。)、それだからこそ、木通がこの方剤に入ってるんだな、なんてね。

やっぱ、昔の人って、すごいこと考えて方剤作ったんだなぁ、と思う。




ここんとこ非常に忙しかったんだけれど、ようやく、峠を越したかも。

で。
最近、漢方講座をはじめたんだけど、生徒さんたちの状態を聞いての感想。

やっぱり、というか、案の定、というか。
日本の漢方をめぐる現状って、ひどいっ。
ってことが、よく分かる。


詳細は書かないけれど、
これでそんな漢方薬を選択して処方していいわけっ!!!???
それで、西洋医学的な検査の結果、つまり客観的に判断できる検査結果から見ても、悪化してる可能性が十分あると思うんですけど、そんなのやってんの???
医療過誤とか健康被害とかで訴えてもおかしくないんじゃない????
なんて内容が。


本当に大丈夫かぁぁぁ????
日本の漢方????!!!!

って感じ。


でも私は医師じゃない。
だから、診断も処方もできない。

私のできるのは、
「漢方薬を処方してもらいたいなら、その辺の一般病院じゃなくて、遠方でも専門家がいるところのほうがいいよ。合わない漢方薬を服用したら、健康を害することだってあるんだよ。」
ってことを、自分の経験もふまえて、伝えるだけ。
詳細な内容については、コメントを避ける、という、逃げ腰。
(法的に結構クロに近くなるかも、ってことで)


しかも、どこに専門家がいるの???と聞かれると・・・・うーん、とうなるしかない状態・・・・

あとは、個々人の勉強のお手伝いだけしかできない。

でも、結局、年齢重ねると、証が複雑化するし、そうなると、下手すると証がコロコロ変わることになる。
(生徒さんはある程度以上年齢重ねた女性たちです)
だから、自分で体の声を聞く習慣つけないと、いくら「専門家」が外でやいやい言ったって、臨機応変に対応できないし、結局、よくならないよね。

自分の体は、自分主体で守らないとね。


最近、忙しい。
漢方講座がスタートしたし、他の講座も複数持ってる。

でも、「予定がこうだから」と、予定にあわせてがんばって動いていたら、なんか、撃沈。
寝込んだ。

やっぱ、もうちょっとセーブすべきみたい。
分かっちゃいるけど、さあ、どうする???・・・て感じかな?


私は、陰虚火旺で体を冷やさなきゃいけない状態の癖して、それを悪化させる辛温の生薬である桂枝が、少々必要な状態。
桂枝を完全に抜くと、水がたまってしまって、めまいがする。

先日、麦門冬などを入れたことによって、麦門冬が重すぎて気血水がめぐらなくなった傾向があったので、少々桂枝を増量してみた。
普段はなんともなかったんだけれど、最近はじめた漢方講座で、ひたすらしゃべっていたら、喉が乾燥して、咳き込んでしゃべれなくなってしまった。

これ、多分、桂枝の使いすぎによる肺陰の減少によるもの。
(当然生徒さんにもしっかり説明しました)

でも、桂枝を完全に止めることはできない。
先日、ちょっと桂枝を抜いたら、めまいがひどくて尿量も減ってむくんだ。
寝てばっかりで、起き上がると、心臓に負担がかかって吐き気もする。
ああ、そういえば数年前まで、こんな状態だったなぁ、でも、こんなにきつかったっけ・・・そうだそうだ。こんなんだった。
こんなので、よく日常生活こなしてたなぁ。
私、えらいえらい。
ってな状態に。


あわてて桂枝を減量して、各種症状は回復に向かっている。

本当に、さじ加減。
全か無か、ってことじゃない。

しかも、こちらは現在春たけなわで、肝気の暴走がまだ続いてるから、季節変動も加味しなきゃいけない。
苦労の只中。


しかし、目の前で、こんな風に、生の治療の現場(私自身に対してだけだけど)を漢方講座の生徒さんに見せることができて、本当にいい教材だと思う。
私、貴重な存在かも・・・???


へっ。

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